DX(デジタルトランスフォーメーション)とテレワークの進展に伴い、企業が扱う機密データはPC、サーバー、モバイルデバイスなど多様なIT資産上に分散し、情報漏洩リスクが増しています。
特に、PCを廃棄、売却、またはリース返却する際、「データが本当に完全に消去されたのか」という不安は、企業の信用問題に直結する重大な懸念事項です。この重要なセキュリティ課題に対し、国際的な信頼性を担保する基準として世界中から注目されているのが「NIST(米国国立標準技術研究所)」です。
本記事では、NISTが定めるデータ消去の国際基準とその必要性、そして企業のセキュリティ体制を世界水準に引き上げるための具体的な方法を解説します。

Contents
NIST(ニスト)とは何か? その定義とデータ消去の基準

情報漏洩対策の基本は「データを残さないこと」です。しかし、PC上で「ゴミ箱を空にする」操作や、ドライブのフォーマットでは、データは完全に消えません。データ復元ツールを使えば、誰でも簡単に機密情報を取り出せてしまう危険性が残ります。確実なデータ消去は、国際的に定められた基準に従うことが必須です。
NISTとは?
NISTとは、「National Institute of Standard & Technology(米国国立標準技術研究所)」の略称です。これは、米国商務省傘下にあり、工業技術や科学技術における標準化を担う連邦機関です。1901年に設立されて以来、長さや重さなどの統一基準づくりから始まり、今日ではサイバーセキュリティを含む幅広い分野で、国際的な信頼性を保証する技術標準と、それを証明するための評価ルールを開発・確立し、提供しています。
特に、情報セキュリティの分野で公開されている「NIST SP(Special Publication)800シリーズ」は、米国の政府機関が従うべき指針として知られています。その信頼性と網羅性の高さから、現在では事実上の国際標準として、世界中の企業や組織がセキュリティ体制を構築する際のベンチマークとして採用されています。NISTが定める基準に準拠することは、自社のセキュリティレベルが世界トップクラスの信頼性を持つことを意味します。
NIST基準が求められる企業像
「NISTは米国の基準だから、日本の一般企業には関係ない」という認識はすでに過去のものとなっています。セキュリティ対策におけるNIST準拠は、今、すべての企業にとって無視できない要件となりつつあります。
規模や業種は関係ない! 全企業にNIST基準が求められる理由
NISTの基準はもともと米国連邦政府機関のセキュリティ強化を目的として策定されたものですが、その影響力と信頼性の高さから、今や国際的な商取引やサプライチェーンを通じて、日本国内の企業にもその準拠が事実上求められ始めています。
NIST準拠が強く求められる理由と、将来的なトレンドを解説します。
国際的なセキュリティの「共通言語」化
NISTの基準は、単なる米国のルールではなく、セキュリティ対策における最も信頼できる指標の一つとして世界中で認められています。国際的な取引が増える現代において、NIST準拠は海外の取引先に対し、「当社は世界基準でデータを扱っている」と証明する手段となります。
サプライチェーン全体への適用
国際的なビジネスを展開する大企業や、高い規制下にある金融機関・大手製造業は、取引先や下請け企業に対しても、高いセキュリティ基準の遵守を求める傾向にあります。NIST基準を採用していない企業は、機密性の高い情報を取り扱う取引から除外されてしまうリスクが高まります。
将来的な全企業への要件化
現在は、米国との取引がある企業や、金融・医療など特に規制の厳しい業界が主な対象ですが、国際的なコンプライアンスの波は確実に日本にも押し寄せています。近い将来、NIST基準は日本企業が満たすべき「グローバルスタンダード」となり、全ての企業にとって必須のセキュリティ要件になる可能性が高いと予測されます。
【事例で見る】こんな時こそNIST準拠のデータ消去が必要
NIST準拠のデータ消去が必要となる具体的なシーンや企業像をご紹介します。
リース・レンタルPCの返却時
リース・レンタル契約では、返却時にデータ消去が行われますが、NIST準拠であればデータ漏洩の懸念を払拭できます。
テレワーク導入企業
従業員のPCが自宅や外出先で紛失・盗難に遭った場合、企業は迅速かつ確実なデータ消去を遠隔で行う必要があります。NIST準拠の遠隔消去は、万が一の事態における最後の防衛線となります。
NISTが定めるデータ消去ガイドライン「SP 800-88」
数あるNISTのガイドラインの中で、データ消去に関する基準を定めているのが「NIST SP 800-88(メディアサニタイゼーションガイドライン)」です。
このガイドラインの要点は、 ストレージに記録されたデータを「復元不可能な状態にする」ことです。PCの操作で「ファイルをゴミ箱に入れて削除する」ことや、ドライブをフォーマットする行為は、データ消去と認識されがちですが、これは前述の通り、ファイル情報(インデックス)を消しただけであり、データ本体は残存しています。
NIST SP 800-88は、データを復元できない状態にすること(サニタイゼーション)を求めています。確実なデータ消去を実現するため、データを完全に上書きする手法(上書き消去)を推奨しています。この上書き消去こそが、PCやサーバーを廃棄・再利用する際に、機密データが第三者に漏れるリスクを根絶するための、最も確実で広く使われている方法です。
NIST準拠の「ソフトウェア消去」が選ばれる理由
データ消去には「物理破壊」と「ソフトウェア消去」の2つの手法があります。
物理破壊は確実ですが、専門業者への委託でコストと手間がかかり、PCの再利用が不可能となり資産価値が失われます。また、最新のSSDでは破壊後もデータが残存するリスクがあります。
一方、NISTが推奨する上書き消去を採用したソフトウェアは、上記のようなデメリットは解消され、データは復元不可能に消去されると同時に、PCの再利用・売却が可能となり、ライフサイクルコストが削減されます。
まとめ:TRUST DELETEでPC情報漏洩の総合防御を
企業の信用と機密情報を守るためには、資産廃棄時のデータ保護だけでなく、PCの利用中から利用終了までのライフサイクル全体をカバーする総合的な情報漏洩対策が不可欠です。
弊社が提供する「TRUST DELETE on CLOMO Cloud」は、NIST SP 800-88に準拠したデータ消去方式を採用しています。そのため、国際水準の確実性をもって、盗難・紛失対策から廃棄まで、安心してご利用いただけます。
「TRUST DELETE on CLOMO Cloud」は、Windows PCの情報漏洩リスクをライフサイクル全体でカバーします。大きな特長が次の『二つの安心』です。
1.ご利用中のPCを守る(紛失・盗難対策)
強力な遠隔ロック・消去
紛失・盗難時、PCの所在地に関わらず遠隔でロックし、不正アクセスを遮断
必要に応じてNIST準拠の上書き消去を遠隔実行
オフライン対応
PCがインターネットに接続されていないオフライン状態であっても、ロックや消去の指示を確実に実行可能
2.廃棄・リース返却時も守る(コンプライアンス)
NISTガイドライン準拠の上書き消去
廃棄・リース返却時には、国際的な信頼基準であるNIST SP 800-88に準拠した方法でデータを完全に上書き消去します
セキュリティへの投資は、コンプライアンスを遵守し、企業の信頼を守るための戦略です。
この機会に、NIST準拠のデータ消去を実現する弊社提供サービス『TRUST DELETE on CLOMO Cloud』の詳細をご確認いただき、御社のセキュリティ体制強化にお役立てください。
関連ページ:TRUST DELETE on CLOMO Cloud

監修者
玉置 俊介
CLOMO事業本部 営業部 営業2課
2021年より当社コンサルティングサービス部に所属し、MDMを中心とした数多くの導入・運用支援に従事。
豊富な技術的知見を強みとし、現在はWindowsクライアントを対象としたソリューション提案を主軸に、パートナー企業との協業や各種販売支援を行う。




