スマートデバイスと運用基盤が支える新たな医療現場像
院内外の情報連携や業務効率化を推進する目的で、新病院開院にあわせて約1300台のスマートデバイスを導入。
1300台を超える端末の資産管理と業務最適化が可能となり、セキュリティと利便性を両立する運用を確立。
スマートデバイスを医療インフラと位置づけ医療DXを推進。セキュリティ研修や規約策定で情報リテラシーを高め、安全かつ柔軟な運用体制を構築。
琉球大学病院では新病院移転を契機に、スマートデバイスを大規模導入。業務効率とセキュリティの両立を図るべく、CLOMO MDMによる一元管理体制を構築した。看護現場を中心に運用が進む中、課題と向き合いながら、医療DXの基盤整備を着実に前進させている。
琉球大学病院は2025年1月の新病院開院にあわせ、スマートデバイスの本格導入に踏み切った。PHSの運用終了を契機に、院内外の情報連携や業務効率化を推進する目的で、Androidスマートフォンおよびフィーチャーフォンを中心に約1300台を整備した。導入された端末は、医療職向けに約900台、看護部門に約300台、事務職員にフィーチャーフォン約100台という構成である。
この取り組みは単なる機器の入れ替えにとどまらず、医療現場のDXを見据えた全体最適の一環として進められたものだ。デバイスの導入にあたっては、現場業務へのスムーズな適用を重視し、各職種・部門ごとに用途に応じた配布と運用体制の構築が図られた。
看護部門では、日勤者数と予備台数を加味して病棟ごとにスマートフォンが配備され、電子カルテ連携をはじめとする業務アプリが実装されている。記録入力、画像撮影、三点認証、バイタル連携、ナースコール対応など、看護業務をスマートフォン1台で包括的に支援する運用が確立されつつある。
「病室に電子カルテカートを持ち込まなくてもスマホならすぐに記録入力ができます。私世代の人間はまだ慣れないのですが若手職員はフリック入力を使いこなし、あっという間に記録してしまいます」と語るのは、医療情報担当の看護師長、多和田慎子氏だ。指示確認、処方の実施入力、処置入力も可能で「スマホであればコンパクトに持ち運べて、患者さんと会話しながらその場で指示の確認もできます」と現場の利便性を実感している。
看護師長、多和田慎子 氏
ナースコールとの連携も進み、呼出通知が病棟単位で端末に表示される仕組みとなっている。当初は通知設定の不具合や、ナースコール通知が業務アプリ画面を覆ってしまうといった課題もあったが、運用調整により改善された。多和田氏は「ナースコールが多い部署ではスマホでの業務が中断される場面はやはり増えます。注射の実施入力時など注意が必要な場面でどう安全を担保するか、今後も各現場にあわせた運用の検討が必要です」と振り返る。
端末の一元管理には、アイキューブドシステムズの「CLOMO MDM」が導入された。医事課情報管理係の新崎恵士主任は「1300台超の端末を誰がどこで使っているかを可視化できたことで、資産管理と業務最適化に大きく貢献しています」と語る。「CLOMO MDM」によって、職種別のアプリ配信や段階的なアップデート管理も実現し、現場からの要望に柔軟かつ安全に対応できる体制が整った。
医事課情報管理係 新崎恵士 主任
一方で、導入に際しては相応の準備作業も必要だった。端末ごとに内線番号や識別番号をラベル貼付する「キッティング」作業は、システム管理室総出で全1300台に対応。加えて、導入直前には設定ミスも起きたという。診療情報管理センターの平田哲生センター長は「今後は設定変更時の確認体制を徹底し、事前検証を強化する必要がある」と語る。
診療情報管理センター 平田哲生センター長
運用が本格化した現在では、複数端末を持ち歩く必要がなくなり、動線の短縮や業務負担の軽減が現場で実感されている。従来はPHSとPDAの2台を携行していた看護師が、スマートフォン1台で通話・記録・連携を完結できるようになった点は大きな成果といえる。
医師向けにも、救急時の情報共有や画像確認にスマートデバイスが活用されており、院外にいる専門医との連携を可能にする仕組みが整備されている。これにより、迅速な判断や対応が求められる場面でも、スマートデバイスが効果的に機能している。
今後は、外国人患者対応として翻訳アプリの導入も予定されている。従来は院内に限られた台数のタブレットを持ち回って対応していたが、スマートフォンに搭載することで、現場の利便性が格段に向上する見通しだ。
診療情報管理センターでは、スマートデバイスのさらなる活用を視野に、情報リテラシーの底上げと運用ルールの見直しを進めている。平田センター長は「医療DXを推進するうえで、スマートデバイスは単なる通信機器ではなく、現場業務を支える重要なインフラである」と語る。
また、同院ではスマートデバイスの活用を全職員に浸透させるため、情報リテラシー向上にも取り組んでいる。その一例が、年1回実施されるセキュリティ研修である。全職員の受講を義務付けており、未受講者には電子カルテのIDを一時停止する措置を講じている。効果はあるようで、法務部門からも評価されているという。
さらに、スマートフォンの使用規約を新たに策定し、業務用端末としての利用ルールを明文化した。現場への周知と運用徹底を進めることで、安全性と柔軟性の両立を図っている。「きちんと使い方のルールが浸透すれば、今後はより多くの便利な機能も解放していけます」と平田センター長は次の展開を見据えている。
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